一斉値上げは約3年振りです。
今回の値上げの波は、まず関東の大手20社ほどから始まりました。関東は価格競争が激しく各社余裕がないため、原料価格の上昇を販売価格の値上げに直結させる傾向が強いです。
関東の次は東海地方の大手プロパンガス会社が値上げ攻勢に動き出しました。そして、すぐに全国で値上げラッシュになると思われます。
当協会の相談窓口には、10月から「値上げの通知が来たが、妥当なのか?」という電話とメールが殺到していますが、当協会では今回の値上げは妥当だとは思っていません。
なぜなら、2014年から3年ほどずっと原料費の安い時期が続いてきたのに、その間、ガス会社は販売価格を下げずにいたからです。
今確かに原料価格は上昇傾向にあります。【グラフ1】緑のグラフを見ればこの3カ月ほど原料価格が上がっているので値上げは当然のように見えます。しかし、それは原料費が安い時期に販売価格を下げてきたガス会社だけが行う権利があることだと思います。
実際は、赤いグラフを見ておわかりの通りほとんど下がっていないのだから、現在少し原料費が上がっているからといって値上げするのは許されないというのが当協会の見解です。
では、詳しくご説明しましょう。
【グラフ1】
【グラフ1】をご覧ください。
まず、❶の時点でのプロパンガスの原料価格と平均販売価格をスタート地点として、その後のそれぞれの動きを追ってみます。
緑の折れ線グラフ、プロパンガスの「原料価格」は、2013年12月をピークに約3年間ほぼ下がり続けました。2014年の平均価格は790.8ドルで、2016年の平均価格は324.6ドルですから2年間で約59%下がっています。
次に、赤の折れ線グラフ、プロパンガスの「平均販売価格」は下がっているでしょうか?こちらは、原料価格の動きにはリンクせずにずっと横ばいのままです。実際に販売価格が下がり始めたのは、❷の時点で、原料価格が急落してから1年も経ってからのことです。2014年の販売価格の平均が7,390円に対し、2016年の平均は7,012円で、わずか5.1%しか下がっていないのです。
本来なら、原料価格が急激に下がっているのだから販売価格も同じように下がってしかるべきなのに、下がっていません。このグラフは特定の不心得ガス会社のものではなく、全国の平均値です。そうです。業界全体がこのような不自然な「値下げ拒否」を実践していながら、少し原料費が上昇しただけですぐに値上げをするのです。
一戸建て住宅の方なら、ご主人や奥様がプロパンガス会社の変更を決意するだけで、30%も安いガス会社に乗り換えることが可能です。しかしアパートではそうはいきません。
アパートにおけるガス会社変更は大家さんだけの権限だからです。
アパートのプロパンガス代は一般的な一戸建てに較べて30%ほど高いので、さらに値上げとなると入居者が受ける打撃はかなり深刻です。多くの大家さんが、給湯器などの設備をプロパンガス会社にタダで設置をお願いしていることがこのような状況につながっています。
入居者が管理会社にクレームを言ったところで、管理会社が動いてくれることはほとんど期待できないし、大家さんの連絡先を教えて欲しいと言っても「我々から大家さんに話しておきます」などと、ていよく断られてしまいます。
大家さんの知らないところで値上げが繰り返し行われ、入居者は誰にも苦情を言えないのです。結局入居者は、高いプロパンガスのアパートを退去することを考えます。
コツコツと貯蓄をして中古の一戸建てを購入したり、そうでない方は都市ガスの物件を探したり、いずれにしてもアパートを出て行ってしまいます。
そうなって空室のままの状態が続いたら、給湯器などを付けてもらっても意味がありません。
当協会がご紹介するガス会社でも、給湯器をはじめあれもこれも無償貸与すればガス代は高くなります。無償貸与というのは、「大家さんからお金はいただかないけど、その分入居者のガス代に上乗せしますよ」ということですから当然です。
「なんだ、それなら協会から紹介してもらわなくても同じじゃないか!」という声が聞こえてきそうなので正しく説明します。
一般的なプロパンガス会社は、契約時が最安値でその後徐々に値上がりし、いくら原料価格が下がっても滅多に下がることがないのは前述した通りです。
当協会経由の場合は、少しくらいの原料価格の上昇では値上げ自体をしないか、上げた場合は原料価格の下落時には下げます。
基本的に当協会の会員ガス会社は不透明な値上げをしませんが、「値上げの通知がきたけどどうなんだろう?」と感じた際は連絡いただければ、大家さんとガス会社の間に立って納得のいくよう対応します。
ガス会社と大家さんの直接対応だと、ガスの専門家にごまかされかねません。その点、当協会はガスの専門家以上に知識を持っています。でなければプロパンガス会社をコントロールすることなどできないし、適正価格を主張することもできないのです。
大家さんとしては、「ガス代の不透明な値上げがないことはわかったけど、設備の無償貸与はもっと切実な問題だよ」と感じていると思います。それは当協会もよく理解しています。
当然ですが、私たちは以下のような基準で大家さんにガス会社をご紹介しています。
プロパンガス業界は、一般的なビジネスとかけ離れた業界です。契約時の好条件だけで判断すると、入居者離れにつながることがあることをよく理解しておくことをお奨めします。